ノンテクニカルスキルでチーム力を強化し現場力を向上

                                                                                                            

 ノンテクニカルスキルは航空業界の安全管理や医療安全など、間違いがあっては重大な結果をもたらす可能性のある分野で研究が進められてきましたが、化学プラントなど他の業種においてもノンテクニカルスキル教育が進んでいます。また、ノンテクニカルスキルは事故の未然防止のための教育だけでなく、ヒューマンファクターの影響を受ける5S活動などのチーム運営においても応用できます。                        

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更新: 2022/9/11

 

1.5S活動のヒューマンファクター

誰もが5Sの重要性は理解しているが継続できずにいるのはなぜでしょうか、どうすれば持続できるのでしょうか。それは、自分で気付き、自分でやる、そして、ルールが守れるように、守りやすいように、「やり方」を変える。そうすることによって自発性が生まれます。・・・そんなこと、言われなくても分かっていますよ。


「かたづけろ!」と怒られてやる整頓はその時だけで、ほとぼりが冷めたら元に戻ってしまいます。自らの意思で行動する5S活動こそが継続できます。掃除をしろ、整理整頓をしろといわれると誰もが反発します。掃除でも、自分から進んで自発的にやった掃除と言われてからやる掃除では、見た目はきれいでも仕上がりが違います。・・・それも、経験して分かっていますよ。


何事も「目標」が共有できたら、活動の方向が明確になりモラルが向上し、チームワークも生まれます。しかし、それができないから困っていると言うわけです。これらの問題は、複数の人によって活動する場合に起こる共通の問題と言うことができます。


・5S活動をやる時間がないという人の本音
本来の業務ではないのでやりたくない、余計なことだからやりたくない、できれば避けたいと思う、そんなことやる余裕がない、自分のプラスにならない、このような反応は、仕事量が膨大で「やらされ感」を持ったまま仕事をしている人たちに多くみられます。このようなケースは、ルールの意義を考えず、今までやっていたからとりあえずやっているという場合が殆どです。


・私だけなんでやらないといけないのと他人の非協力的な態度が不満
仲間とのコミュニケーションが不足しており、相談する相手がいない場合、何で私だけがやらないといけないのという気持ちになり、創造性に欠けるチームになります。


・5S活動による業務改善の効果がもたらす影響を理解していない
5S活動によって自分の仕事がどれだけ楽になるか理解していない。淡々と目先の業務をこなしており、変化を避けるようになります。

 

これらの不満から浮かび上がってくるのは、共通の認識、目的の共有、楽しい、表彰される、優位になる、仕事が楽になる対策をすることです。どこの企業にも2割ほどの反対者はいるという2:6:2の法則があります。まずは、反対する2割の人は相手にせず、積極的な2割と中間派の6割の合計8割の人を対象に成果を示したうえで、反対派の2割を取り込みましょう。それには反対派に負けない強いリーダーシップが必用です。では具体的にどうすれば良いのでしょうか。


 


2.5S活動に必要なノンテクニカルスキル 

スキルについて専門性や難易度の範囲を下表にまとめました。5S活動を行ううえで必要なスキルにはどんなスキルがあるのでしょうか、それは専門的なスキルである5S活動の進め方と、その他のスキルの大半はノンテクニカルスキルです。 このことは、5Sの中に「しつけ」があることからも容易に理解できます。

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1) 5S活動の能力
ボトムアップによる意見の吸収
現場の社員のやる気が重要です。指導者は雰囲気作りに専念し決して強制しない。
 

・5S活動は業務の中で行う
特に人手不足の影響の大きいサービス業では、パート社員が多く就業後に時間を設けることは困難です。パート社員比率の少ない組織においては正社員が中心になって5S活動を進めることが可能ですが、パート社員が中心の職場では時間の使い方は異なります。パート社員が中心の職場においては、業務の中で5S活動を進めることが必要です。組織の現場力に合わせた5S活動を行うということです。

 

報酬、褒める、喜びを与える
これは以前からモラールが低いからなどと言われていますが、多くは精神論として片付けているのです。ですから、最初のうちは一生懸命やっていた5S活動もいつの間にか元の状態に戻ってしまうという繰り返しです。
また、人は目的を共有できればチームワークが生まれると言われています。では、どうしたら目的を共有できるのでしょうか。上司が一生懸命目的や仕事の重要性について話をしても、自分には関係ないやとよそを見ている人がいます。このような人たちは5S活動についても同様で、やりたくないのです。このようにいくら精神論でやっても効果につながらない場合が少なくあります。

 

2) 5S活動のノンテクニカルスキル

そこで、このような状況を解決するために、5S活動で必要なノンテクニカルスキルを、「状況認識」「意思決定」「コミュニケーション・チームワーク」「リーダーシップ」に区分してみましょう。

・5S活動をやる時間がない → 状況認識
仕事が忙しいという場合はどのような対策が必要でしょうか、これには5S活動の重要性を理解できていないために、正しく状況を認識できていな場合も含まれます。
   ・5S活動と企業の方針とのつながりを理解する
   ・業務分担が目的達成のために適切であり、健全であることを理解する
   ・思い込みは、事実と異なることを理解し認める 
     

・5S活動に全員の協力が得られない → コミュニケーション・チームワーク、
                    リーダーシップ
自分だけどうしてやらなければならないのか、全員が思い思いの仕事をしておりお互いが非協力的である。
   ・改善シートの掲示により、チームワークの成果を分かちあう
   ・簡単な目標の達成で成功体験を体得して維持継続する
   ・朝・昼礼などでの話し合い情報の共有化をはかる

 

・業務改善をやろうという気持ちがうすい → 意思決定
   ・5S活動によって仕事が改善できることを知る。
   ・改善活動結果に応じた報奨金制度をつくる
   ・改善効果に応じて表彰することにより、改善の必要性の理解を高める
   ・改善して良くしようという自発的な行動につなげる

 

既におわかりのとおり、上記に書いたことは今までずっとやってきています。しかし、これをノンテクニカルスキルとして自分の能力の向上をはかることは、ひとり一人のスキルアップ見える化することになり「楽しい5S活動」の推進に大きな効果をもたらします。

 

3.5Sチーム力の強化 

 会社での仕事は益々複雑に高度化し、一人の個人でなし得る仕事というのは限られています。産業界においては最先端企業から人の命をあずかる医療や介護業界までどのような企業であっても、チームで取り組んで問題解決にあたり業務を遂行することが不可欠です。そのチームの力を向上させるためには個人のスキルや経験を発揮しあうことで、他のメンバーの弱点の補強と強みの強化を行い、個人では実現できないことをチームで達成しなくてはなりません。そこで技術的な面(テクニカルスキル)に加え、チームワークに影響をうけるノンテクニカルスキルを向上させることによってチーム力を強化し、職場の仲間と共に成果を上げ、会社に貢献する5S活動の進め方を提案します。

 

 仕事の中で5S活動を実施するとは、多忙な仕事中に気付いた問題点を仕事のあいまにメモしておき、仕事が一段落してから5S改善を実施することをいいます。また、他のチームメンバーに対しても情報を共有し、注意喚起することにより気づきを生み未然防止につなげることです。自発的という行動のポイントはこの点にあります。個人の仕事における気づきは、本人が自発的に他のメンバーに伝えないと事故の未然防止やムダの排除はできないからです。そればかりか、やがて職場全体の問題となって顕在化する可能性があります。このように5S活動には即効性はなく、効果がでるまでには時間がかかります。

 

 一方、会社はいつも良いことばかりではありません。5S活動は悪い状況の時に備えて全員参加の協力体制で困難を乗り越えられるように、体質を変えておくための道具であるということができます。

 

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